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【一輪の花言葉】いつまでも色褪せない

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12月、師走はお坊さんが走るほど忙しいと言われる季節だ。
お坊さんではない私は年中走り回っている気がするが、今月は猛ダッシュしている気分である。

施設でのクリスマス会は毎年多くの利用者さまが楽しみにされている。
利用者さまだけではなく、我々職員も楽しみにしているイベントだ。
ビンゴ大会や職員によるハンドベル演奏会、ケーキやプレゼント。
目白押しのクリスマス会のビンゴ大会での景品、ハンドベルの練習、ケーキ・プレゼントの手配、
さらに当日は仮装をするので衣装の準備等々に奔走している。

今日も日々のケアや準備に追われる中、一息ついたタイミングで利用者さまに声を掛けられた。

「今日も忙しそうね」

「あはは、そうですね。でも落ち着きましたよ」

「あらそうなの?じゃあちょっとおしゃべりに付き合ってくれないかしら」

「はい、是非!」

「これなんだけどね」

そう言って見せてくれたのは利用者さまの昔の写真だ。

「家の掃除をしたら出てきたみたいでね。持ってきてくれたのよ。これが私」

「10代頃のお写真ですか?」

「そうそう。もうすっかりしわくちゃのおばあさんだけど、私にもこんな頃があったのよねぇ」

「これなんかすごい笑っちゃって」

見せていただいたのは、利用者さまの笑顔の写真。
庭で遊んでいる様子だ。雪が薄く積もっていて、端には寒椿が見える。
何か面白いことがあった瞬間を写したのだろう、満面の笑み……いわゆる大爆笑である。

「この時は何がおかしかったんだったかしらねぇ」

「これは相当面白いことがあったんでしょうね」

他にも色々な写真を見せていただき、利用者さまとの時間を過ごした。
最近はイベントの準備に追われ、こうした時間を設けることが出来ていなかった。
もちろんイベント準備も楽しいことの一つなのだが、利用者さまひとりひとりと向き合う時間も大切なものであると、改めて実感する。

その後もイベントの準備は慌ただしかったが、準備を終え当日を迎える。
赤い帽子と赤い上着に赤いズボン、黒いベルトを締めて白い袋を持つ。
最後に大きなひげを付ければ、誰がどうみてもサンタクロースである。
周りを見渡せば、他の職員もサンタクロースになっている。
事務所にはサンタクロースが十数人。
今年は気合いが入って、イベントに参加する職員全員の衣装を用意してしまった。
予想できなかったことではないが、ここまで揃うと壮観である。

イベントのプログラムは職員のビンゴ大会から始まり、プレゼントのお渡し、最後は職員によるハンドベル演奏会だ。
1年の中でも楽しみにされている方の多いイベント、今年もと意気込んでマイクを握った。

ビンゴ大会も大いに盛り上がり、お渡ししたプレゼントも喜んでいただけた。
最後はハンドベル演奏会。
懸命に練習はしたが、自信満々に演奏できるかと言われれば即答はできない仕上がりだろう。
緊張しながら舞台上に立つ。
舞台に立ったところで会場がわっと沸いた。
登場の拍手の中に笑い声。

「やだもう!サンタクロースがいっぱい!」

「お腹よじれちゃいそうだわ」

笑っていたのはこの前、写真を見せてくださった利用者さまだ。
ぞろぞろと舞台上に上がってくる複数のサンタクロースが余程にツボだったらしい。
利用者さまの顔がぽっぽと赤くなる。
見せていただいた写真を思い出す。
あれはセピア色に褪せていたが、色褪せる前はきっとあのかわいらしい色だったのだろう。

その笑い声に私の緊張もほぐれ、落ち着いて演奏をすることができ、クリスマス会は大成功に終わった。

12月のお花:寒椿
寒椿の花言葉は「愛嬌」「謙譲」「申し分のない愛らしさ」です。

寒椿は寒い季節にそっと健気に花を咲かせる、その控えめな姿からつけられたそう。
いつまでも色褪せない、「愛らしさ」を持てる人、日常の中から見つけられる人を目指して。

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